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「…それって……もしかして、彼女?」
「んー…彼女……ではないかな。」
「……そっか…。」
焦る俺を他所に会話は続いていく。彼女じゃないって…確かに、女ではないけれど。
ヨウと話している女子は、彼女ではないと聞いて、落胆していた表情が少し明るいものになった。
……少しでも期待させるようなこと言ってんじゃねぇよ。
「…し、しいば、くん……?」
「……?」
「ど、どうかしたの…?二人のこと、凄く見てるから…。」
い、いけない。ついつい二人の会話に聞き入っていた俺は、その様子をガン見していたらしい。…きっと睨めつけていたことだろう。
「……別に、何でもない。」
「そ、そっかぁ。…私、椎葉君と話してみたかったんだ…!」
「……何で?何を?」
「い、いや…何をっていうのは、無いけど…。ちょっと、き、気になってたっていうか。」
ヨウと話している女が連れてきた女は、少し変わった奴らしい。何故か俺に興味を持ち、話してみたかったんだと。
正直人と話すのは苦手だから、こういう時どうしたらいいか分からない。
ここで何も返事しないっていうのは少し可愛想だし…自己紹介でもしておけばいいのか?
「……そうなんだ。…俺、椎葉荒太。」
「…うん!わ、私、橘 芽衣(タチバナ メイ)っていいます…!」
頬を少し赤らめた橘も、女の子らしい雰囲気が漂っている。綺麗に巻かれた茶色い髪は、毎朝どれくらい時間をかけられたものだろうか。
「美優ちゃんから、椎葉君達に話しかけに行くって言われた時は、緊張でどうにかなりそうだったの…!」
「…美優……?」
おっと、心の声が漏れてしまった。美優って誰だ、と一瞬思ったが、ヨウと話している女のことだろう、とすぐに察したのに。
「…美優ちゃんのこと、知らない?」
「…あぁ。全然知らない。」
「そうなんだ…!美優ちゃんって、かなり有名なんだよ!一年生なのに、文化祭のミスコンで優勝したから!」
「…へぇ。」
全く持って興味ないが、今までのモヤモヤが無くなった。
どうやら美優というこの女は、文化祭で見かけたことがあったようだ。
ミスコンなんてものはどうでも良かったのだが、それは全生徒が集まった時に行われるものだったために、見る羽目になったのだ。
……確かに美人だもんな。
「……ふふ、椎葉君って、ちゃんとお話してくれるんだね。意外だなぁ。」
「…喋るくらいできるけど。」
「…あ、ごめんね…!悪い意味じゃなくて、もっと…こう…。話しかけても、睨まれるか無視されるかだと思ってたから…!」
「……いや、悪い意味でしかないだろ。」
「っあはは、ごめん!でもそうじゃなくて、椎葉君はそんな感じで全然問題無いっていうか。」
何が楽しいのか、橘は一人で笑っている。
やはり周りには悪い印象を持たれているのか。全然問題無いって、そんな訳ないだろう。
「…ねえ、荒太君は彼女いないの?」
「…あ?別に、いないけど。」
ヨウだっていないって言ったし。こう返すので合ってるよな?彼女じゃないし…。
しかし、何故世の中の女という生き物はこうも恋愛話が好きなんだ。美優という女の場合は、ヨウのことが好きだから聞いたんだろうけど。
「…そうなんだ!じゃあ、好きな人とかもいないの?」
………。いるけど…誰って聞かれても答えられないし…だってヨウだから。いや、馬鹿正直に答える必要もないか。
「…別に、いない。」
「ええっ、勿体無い!椎葉君なら、選び放題なのに…!」
「…それ、言う相手間違ってない?ヨウの話だろ。」
「え、間違えてなんかないよ~!そりゃ、伊織くんもだけど…!」
「…お世辞とか、言わなくていいよ。」
きっと女子同士では気を遣うこともたくさんあるのだろう、それが染みついているのか、橘は俺にまでお世辞を言ってきた。
あからさますぎるお世辞だな、とあきれ半分、女子って大変だな、という労り半分、なんとも微妙な気持ちだった。
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