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夕日の街(チビ大和と竜也)
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(前回は久し振りの更新にもかかわらず、読んで下さいましてありがとうございました。これは、コメント欄に載せたSSのもう一つの候補だったのを加筆したものです。ベースがあったので、本編からの連投出来ました)
「親父………今日の夕日は、また一段と真っ赤やで」
支部での会議の帰り。
大和は、共に会議へ出席し、一緒に車の後部座席に乗っている嵩原へ声をかけた。
大都会のビル群を染める、真っ赤な夕日。
車窓から外を覗くだけで、燃えるような赤さに顔までも熱く火照りそう。
「………………懐かしいな。随分昔にも、こないな夕日を見た事があるわ……………」
「昔………………?」
「ああ…………お前がまだ、小さかった頃な…………」
「え………………」
小さかった頃。
今の大和には、そんな記憶はない。
振り返る大和の視界に、穏やかに夕日を眺める嵩原の顔。
どんな夕日だったのか。
とても懐かしそうな父親の眼差しに、大和は何故か邪魔をしてはいけない気がして、それ以上は聞けなかった。
夕日がビルの谷間を通り、長い長い光の筋を描く。
切れる事もなく、ビルからビルへ谷間から谷間へ……まるでそれは、まだ見ぬ世界へ続く道のよう。
果てしなく果てしなく、何処までも…………。
『お父ちゃん、見てぇ!赤い道が続いとるぅっ』
多香子を亡くして間もない、ある日。
大和と久し振りに銭湯へ行った嵩原は、愛息子の言葉に顔を上げる。
『おぉ、ホンマやなぁ…………赤い道や………』
帰りしな、小高い丘に差しかかった二人の前に現れた、ハッとするような真っ赤な線。
キラキラ、キラキラ。
幻想的な光が、眩しい程に辺りを照らす。
『この道、お空から来とるよ!歩いて行ったら、お母ちゃんに会えるかなぁ!?』
ギュッと自分の腕を握りしめた、小さな手の無垢な叫び。
『え………………』
母親の死なんて、まだよく受け入れられない大和の問いかけに、嵩原は答えに詰まる。
多香子が亡くなった日。
大和の前では絶対に泣かないと決めた嵩原だったが、この時はさすがに目頭が熱くなった。
でも、その瞬間。
親の想う以上に、子は逞しい事を知る。
『お母ちゃーんっ!!俺、お父ちゃんと頑張っとるからねー!!いっぱいいっぱいご飯食べて、お父ちゃんみたいに強くなって、いつか会いに行くから待っといてなぁーっ!』
『やま……………』
赤い空に響き渡った、子供のパワーたるや。
嵩原の方が圧倒され、心を震わせられた。
『な、お父ちゃん!俺頑張る!泣き虫止めるし、好き嫌いせんとご飯食べる!それで、いつか必ずお母ちゃんをびっくりさせたるんやっ。お父ちゃんより格好ええやろーって!』
夕日の眩しさが、瞬く間に霞んでく。
自分には、こんなにも眩しい太陽がここにあった。
俯く必要はない。
この子を見ていれば、自ずと顔は前を向ける。
一人じゃないんだ。
これが、家族……………。
嵩原はグッと奥歯を噛みしめ、荷物を持った腕で可愛い我が子を抱き上げた。
『ああ、頑張ってみ…………目一杯頑張ったら、きっとええ事は起きる。夢は、これからや…………誰にも負けへん男になって、お母ちゃんに自慢したれ!』
『うん…………っ!!』
楽なだけの人生なんてない。
失ったものもあれば、哀しい記憶も刻まれた。
それでも、そこからまた大切な何かを学ぶ事もある。
自分には、大和がいる。
頑張ろう。
頑張ろう。
未来はまだ、あの赤い道のように続いてる。
(SSを使ったので、本編共に大和とお父ちゃんになってしまいました、すみません。また他の皆も書きたいと思います。そして本編は、(頭の中はもう劉組織より先を見てるのですが)劉組織では大和らしい戦いが出来るのではないかと思っています。
このシリーズ、途中入院やこんな事があり、本当に長い連載になってしまったなぁと改めて感じてます。きっと、終わり頃は恋愛男子史上一番の修羅場になると思いますが、もし許されるなら、どうか宜しくお願い致します。皆様、本当にいつもありがとうございます)
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