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30 関口邸2
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目が覚めると真っ暗だった。
夜?
一体、どれだけ眠ったんだろうか。
少し息苦しいのには変わりないが、朝よりは楽だ。
身体を起こしてあたりを見渡す。
「関口の家……?」
初めてだった。
とっても静かな場所だった。
暗い室内に、窓から差し込む月明かり。
物音一つ聞こえない世界。
蒼の実家や、アパートではそうも行かない。
なんらかの生活音が耳に付く。
だけど、ここはそれだけ大きい家だと言うことが分かった。
しばらく辺りを見ていたが、なにもない部屋だった。
ベッドのほかには勉強机がある。
そして本棚。
蒼の家のそれとは違う種類の書物が収められている。
楽譜。
そして音楽関係のテキストから辞書まで。
ここは、関口の部屋なのだろう。
運ばれたときは、朦朧としていたからよく覚えていないけど、彼がずっと付き添ってくれていたことは覚えている。
ショルティにも挨拶もしないでさよならになってしまった。
なんだか失礼な気がした。
布団をよけて、やっとの思いで這い出す。
そっとベッドから降りてみるが、一日寝ていたせいで足元がおぼつかなかった。
その内、ベッドに掴まって床に座り込んでしまう。
膝ががくがく震えていた。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
関口には迷惑をかけ通しだった。
周囲の様子を伺おうと、なんとか床を這っていき、扉にたどり着く。
そして、そっと開けてみた。
廊下は明るかった。
目の前に飛び込んできた光景はショッキングだ。
廊下は真っ直ぐで、どこまでも続いているかのようだ。
広い。
普通の日本家屋では想像もできない造り。
「お屋敷みたい……」
少し動くとやっぱり息苦しい。
廊下に手を着いて呼吸を整える。
ひゅうひゅうと喉が鳴っていた。
しばらくそうしていると、ふと影が伸びてきて蒼の視界を暗くした。
「へ?」
「なにしてんの?あんた」
女性の声。
蒼はゆっくり首を上げた。
そこにはノースリーブタイプの黒のワンピースを着ている女性が蒼を見下ろしていた。
彼女は金の髪に大きなシルバーのリングピアスをしていた。
ぎゃ、ギャル!!
蒼は大きく瞳を開ける。
「あんた、誰?」
それはこっちの台詞だ!
でも。
ギャルは恐い。
蒼は、小心者だし。
彼はそのままでは失礼だと思い、ゆっくりドアにつかまりながら立ち上がった。
身長はかろうじて蒼のほうが高い。
やっぱり女の子だ。
蒼は、ほっとした。
「あ。あの。おれは」
戸惑って言葉を濁していると、関口が廊下の向こうからやってきた。
「朱里(あかり)。お前、なにしてんだ?」
関口は女性に声を掛ける。
「この人、こそこそ怪しいから声掛けてた」
「怪しいっ!?」
指差されておろおろする。
確かに四つんばいで廊下の様子を伺っていれば怪しく思われても仕方がないが。
関口は吹き出した。
「怪しいって!」
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