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哀れみを込めて
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ここ最近、会長の様子は変だったし、眼鏡に取られてたと思ってた体操着はあいつが入院してる間に返ってくるし、変な事ばっかで気分最悪だった。
一番最悪と言えば、まぁ階段から落ちた事だったけど。
足首負傷して、初めて松葉杖生活なんてしたぜ。
思いの外、治りも順調で今は松葉杖使ってねえけど。
それに残された問題は眼鏡だ。
ほんとは昼休みになったら正面玄関まで迎えに行く約束だったけど俺は行かなかった。
なぜなら、あいつが今どんな状態か知っているからだ。
「離せよおいこら眼鏡‼︎」
昼休みが終わる直前。
生徒会室から出てずっと眼鏡に服の裾掴まれてる。
手の甲を抓って引き剝がしたいところだが、振り向きたくはない。
「伸びるだろが‼︎」
「伸びるくらいならいいだろ」
「良くねえわ‼︎」
ドスの効いた眼鏡の声。
もう一度言うが、俺は正面玄関に迎えに行くというこいつとの約束をすっぽかした。
「お前こそなんで逃げるんだよ」
だって、こいつメガネつけてねーんだもん。
「はっ、俺はお前の無様な姿見て高いとこからあざ笑ってやろうと思ったんだ」
「高いところねぇ…」
残念な事に、階段から落ちた時からこいつのメガネは死んでる。
しかも入院してたせいで新しいメガネを買いに行く暇も無かったらしい。
ちなみに学校まではタクシー使ったらしい。くそダセェ。
ここまで説明するともう察しがつくだろう。
いわば眼鏡は今 完全無防備だ。
ふっ、ざまぁないぜ。
「とにかく離せよ。お前の教室はあっちだろ」
と、反対方向を指さすが、眼鏡は目を細めて眉間にシワを寄せる。
「ああ、分かったよ」
歩き出す眼鏡だったが、すぐ近くにあった掃除道具入れに頭をぶつけてその場で立ち止まってしまった。
「ぶくくっ」
馬鹿め、そんなとこにある障害物も見えねえとかくそかよ。
「……チッ」
「しょうがねえなぁ。教室まで送ってやろうか?」
コンタクトという救世主を拒んだ結果がコレだ。
まぁそのおかげで思う存分眼鏡を良いように出来るんだがな。
「“お願いします新様”って言えたら送ってやるよ」
「………………」
くぅーっ‼︎気持ちいい‼︎
眼鏡の奴、俺にガン飛ばしてるつもりだろうが、生憎そっちは廊下に貼られたポスターだ。
馬鹿め馬鹿めぷぅ〜‼︎
「おら、早くしろよチャイム鳴るだろ…が」
ケタケタと笑っていると、制服の襟元を掴まれグンッと勢い良く引き寄せられる。
「……っ、な、なんだよ」
顔面スレスレまで眼鏡の顔が近くに来て、思わずドキッとしてしまう。
しかも、メガネ無しのこいつのフェロモンはやばい。
「に、睨んでも怖くねえぞ‼︎」
「……い」
「は?」
くそ眼鏡のお色気フェロモンなんかにやられてたまるかと、ファイティングポーズを取った瞬間、眼鏡が何かを囁く。
「お願いします、新様」
「……………………ふぇ」
俺の中の火山が噴火した。
「っ、ば、お、おまえっ」
「言ったんだからちゃんと送ってくれよ」
こいつっ‼︎ 何を白々しい‼︎
ここは俺がこいつに屈辱的な思いをさせるつもりだったのに、こうもさらっと言いやがって…っ
し、しかも……なんで俺の方がこんな焦ってんだよ‼︎
「お前にはプライドってモンはねぇのか」
「まぁ、こんな状態だと、無いね」
言い切るなよ。
「……っくそぉ……」
結局、俺の裾を掴ませたまま、眼鏡の教室まで送っていく羽目になった。
絵的にシュール過ぎるだろ。なんなんだよコレ。
「ほら、着いたぞ」
「ああ」
教室まで送り届けると、眼鏡はそのまま中に入って行く。
……が、入る直前、そして自席に着くまでの間、計7回もあいつは机や壁に体をぶつけていた。
「…………大丈夫なのか?あいつ」
無防備眼鏡をいじめる事が俺の目的だが、あまりにもおいたわしい眼鏡の姿を見ると、少し、ほんのちょびっとだけドンマイ。と思ってしまった。
哀れみを気持ちいっぱいに込めて。
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