アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
おやすみとおはよう
-
「ビッフィー……!」
目を開けて一番、真っ先に食いついたのはここの遊園地で人気のあるシロクマの人形。
机の上に座らせてある人形を爛々とした表情で見ていた。
「お誕生日おめでとう」
「ッ、ありがとう〜……!」
「泣いてんの?」
「だってビックリしたから」
「泣き虫だな本当に」
「うるさッ、泣いてない」
「ふふっ、はいはい」
ウズウズしてる祥へビッフィーを渡せばぎゅうと抱きしめて嬉しそうに微笑んでいる。
子供の体程はある大きい人形に顔を埋めては可愛い可愛いと言っていて、買った時の恥ずかしさは報われた。
一人で先に来て買った時、やたらと店員に絡まれて根掘り葉掘り用途を聞かれた時は流石に疲れた。
会計の時には「彼女さんの事大好き何ですね」なんて言われたから、「世界で一番好きです」って惚気ておいたけど祥にバレなきゃ怒られる事も無い。
隣に居たなら間違いなく殴られていただろうけど。
「これ全部直輝が用意したの?」
「ああ」
「……本当にありがとう」
隣に座ると、祥が珍しく寄りかかってくる。
人形を抱きしめて俺の肩に頭を乗っけて朱色に染まった頬は緩んでいた。
机の上には、ケーキとその周りには真っ赤な薔薇の花びらを散らせていて、蝋燭が赤の色をユラユラと揺らしていて淡く光る。
女でも無いんだから、ここまでする必要も無かったかと考えたけども祥は案外、花だったりベタな祝い方が好きだ。
イルミネーションも、俺は眩しいぐらいにしか感じなくても祥は綺麗だと好むし。
人形だって興味も無いけど、祥は物欲しそうに見ている。
だから買って良かったと思ったけど、本命のプレゼントは人形じゃなくて
「ケーキ食う?」
「うん!」
「あ、そうだ。 後プレゼントはこれも」
「え! なに?」
まだあるの?と嬉しい様な申し訳ない様な顔をして俺から黒色の四角い箱を受け取る。
両の手に収まる程の大きさで、正方形の箱を開けると祥はそれを見つめたまま固まってしまった。
「……祥?」
「ッ、ぐす」
「どうした気に入らなかった?」
「ちが……」
もう一つのプレゼントは香水。
俺が今回ニューヨークでイメージモデルをしていた大型ブランドの物だけど、気に入らなかったんだろうか……。
ふつふつと不安が募った時、祥に名前を呼ばれた。
「直輝……」
「ん?」
「……ありがとう」
「ッ、!」
俯いていた顔を上げると、祥の方からキスをしてきて驚いた。
啄む様に触れ合うだけのキスをして、離れると祥は目をうるうると潤ませ、俺の大好きな笑い方で微笑んでいる。
花が咲きほころぶ様な、そんな柔らかい笑顔。
「嬉しすぎて声が出なかった」
「だったらいいけど」
「本当だよ……。 俺こんな素敵な誕生日過ごせるなんて幸せ者だね。 素敵なプレゼント見つけるの大変だったよね……ありがとう」
「あー……それな、オーダーメイド」
「……え?!」
「だから、それは祥だけの為に俺が作ったやつ。 世界で一つだけのやつ」
「ッ、え、直輝……ッ、ば、ばか〜……!」
「あ、おい」
「も、も〜〜! 直輝ッ、本当に……俺に甘すぎだよッ」
ぎゅうっと飛びついてきた体を受け止めて、トントンと優しく背中を叩く。
首に巻きついてうりうりと擦り寄ってくる祥の肩に俺も顔を埋めた。
「……デザインも直輝が?」
「ああ」
「……なんかもう俺の好みとか全部分かってるの恥ずかしい」
「祥の事なら何でも知りたいからな」
「ふふっ、バーカ」
祥の手に握られた三日月の形をした硝子の入れ物。
透明の硝子の内部には祥の誕生日月である魚座の模様が掘ってあって、その隙間を埋める様に白と濃い青の細かな粒子が注がれている。
香水の色も深く濃い青色で、星空が好きな祥へあげたいと思っていた。
「結構作るの楽しかったよ。 何ならちんこの形にしようかとも思った」
「ッ、ゲホッ、それは最低……」
「ふっ、でも好きじゃん?」
「〜〜っ、好きじゃないからっ! 何言ってんだよ変態バカ!」
「冗談だよ」
祥をからかってほっぺを摘む。
むぅっとした表情を浮かべてもされるがままの祥が愛しくて、虐めてやりたさに両の手で頬を摘んで伸ばすと不細工な顔の唇に何度もキスをした。
「いひゃい……」
「ぶっさいくだなぁ」
「な、なおひが!」
「何言ってるか分からねーよ」
「……腹立つ」
「ふっ」
「これどんな匂い?」
「それ、香りが変わるようになってる」
「そうなの?!」
「ノーマルな時は、爽やかな香りだけど」
「うん!」
「体が火照って、汗と熱に反応すると甘い香りに変わるんだよね」
「へー!」
「意味わかってる?」
「え、なにが?」
そうなんだ〜!なんて頷いている祥に香水をワンプッシュふりかける。
ふわりと控えめに爽やかで清潔感のある匂いが鼻を刺激して祥もいい匂いなんて喜んでいたけど、その無邪気さ故に香水を選んだってこと祥は知らないんだろうな。
熱と汗に反応するって意味がどういう事なのか分からないんだから、本当に馬鹿で可愛くて愛しい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
391 / 507