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翌朝。
恐る恐るリビングへの扉を開ける。そこにはソファに座って新聞を読んでいるお父さんの後ろ姿と、慌ただしく部屋を動き回る桜さんの姿。
キッチンから出てきたそいつが両手に皿を持ち、俺に微笑みかけてくる。
「おはよう慧君」
朝食もリカちゃんが作ったらしく、テーブルにはワンプレートに盛りつけられたそれが並ぶ。
焼かれたパンに綺麗に盛られたサラダ。ふるふると表面を震わせるオムレツは半熟なんだろう。
昨日俺を手でイかせたリカちゃんは、そのまま最後まですることはなかった。
誰よりも遅く起きてきた俺を、お父さんと桜さんが同時に見る。昨日の声が聞こえたんじゃないか、それとも何か変なところがあるのか……2人の視線が突き刺さる。
「お…はよう、ございます」
言葉を詰まらせて朝の挨拶をした俺に、先に話しかけてきたのは桜さんだった。
「慧くんおはよう。ちょっと急に呼び出されて仕事に行かなきゃ駄目なの、ごめんね?」
本当なら今日も休みだったはずの桜さん。忙しそうに見えたのは出勤の準備をしていたからだと知り、安心した。
けれど問題はこの人だ。
じーっと俺を見つめるのはリカちゃんのお父さん。
息子に似て……って、リカちゃんが似てるんだけど。その勘の鋭い目が俺を射る。
内心で冷や汗をかく俺を、ゆったりと眺めたお父さんが言った。
「寝起きの天使ちゃんは女神のようだよ!」
パァっと花を咲かせたかのような笑顔で、挨拶よりも先に迷言を零したその人は、うんうん、と頷きながら読んでいた新聞を畳んだ。
そしてその両手を広げ、声高らかに告げてくる。
「起きたばかりで人肌恋しいだろう?さあ、おいで」
その頭に落ちたのはリカちゃんの肘鉄。容赦なくそれを振り下ろした息子は、にっこり笑っていた。
「理佳……痛いよ」
「お前の発言の方がな」
「大切な思い出が、全て抜け落ちてしまいそうだ」
「へぇ。いっそのこと、地獄に落ちれば?」
リカちゃんに冷笑を浴びせられたお父さんは、首を竦めた。追い打ちをかけるように桜さんからの「気持ち悪い」という言葉が聞こえ、程なくして朝食は始まる。
「見て見て、天使ちゃん」
お父さんにそう言われて視線を向けた先には、オムレツの上にかけられたケチャップ。『天使ラブ』と書かれたそれに、俺の口元は引き攣る。
「器用だろう?ほら、解剖もよくするから指遣いには自信あるよ。なんなら今からその身体で経験してみ……って、理佳」
その文字をぐちゃぐちゃに潰したのはリカちゃんだ。真っ赤に染まったオムレツを、お父さんは悲しそうに見つめる。
けれど次の瞬間には、ふふっと笑みを零した。
「天使ちゃんが私の前でどろどろに溶けたと思えば、それはそれで絶品」
「あんたもう黙れ」
「ところで理佳、私だけパンが焦げてるよ」
「そんなに見つめられれば、パンだって焦げる」
淡々と言い返すリカちゃんに、気にせず食事を続けるお父さん。そして、そんな2人を完全に無視してテレビのニュースを見る桜さん。
獅子原家は朝から変だ。けれど、それに少し慣れてきた俺もいる。
「慧君、野菜も食べて偉いね」
食べ終わった皿をシンクに片しに行くと、珈琲を淹れていたリカちゃんが俺を褒めてくれる。その手元には自分用の他に、同じものがもう1つ。
「悪いけど、あのスケベなおっさんに持って行ってくれる?」
「別にいいけど……また言い合いしないか?」
俺がこれを渡すと、絡まれるのは必須だ。そしてリカちゃんが言い返して喧嘩になるのは目に見えている。
じゃあ、なんで俺が?と首を傾げた。
「行けばわかるよ。ちょっと電話してくるから席外す」
俺の頬に軽くキスを落としたリカちゃんは、自分のマグカップだけを持って歩の部屋へと消えた。
どういう意味かわからないまま、お父さんの元へと向かう。
テーブルに置いてある物を見て、すぐにリカちゃんが俺を仕向けた意味に気づく。
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