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「ウサギちゃん」
桃ちゃんが俺を呼ぶ。
ゆっくりと顔を上げれば、いつもの優しい桃ちゃんが真剣な瞳で俺を見つめていた。
「リカは性格も口も悪いし、ドSだし俺様だし本当にどうしようもないヤツだけど嘘だけは吐かない男よ。
ウサギちゃんのことを生徒と思ってる気持ちもある…けれどそれだけじゃない。
だから本当のことは言えなくて黙るしかないの」
「それどういう意味?」
「これ以上はあたしからは言えない。
でもね、1つだけ教えてあげる。リカはああ見えて一途で健気なのよ」
歩と同じことを言う桃ちゃん。
少しだけ柔らんだ雰囲気に、知らない間に込めていた力が抜ける。
「大丈夫。ウサギちゃんは悪くないわ。少し休んで、また笑った顔を見せてちょうだい」
その優しい手の温もりと声がまた涙を誘う。
俺が眠るまで……桃ちゃんは隣でずっと微笑んでくれていた。
*
「おかえり」
ドアの前に立つ男が俺に声をかけた。
「アイツは?」
「泣き疲れて寝たわ。だいぶ追い詰められて可哀想に」
胸がグッと締め付けられる。
泣かせたくなんてないのに。
いつも笑っていてほしいのに。
傷つけたくない…なんてよく言えたものだ。
また俺はアイツを傷つけてしまった。
今度は自分の手で直接…アイツを泣かせてしまった。
「リカ、話があるの」
「………入れよ」
散らかったリビングを見て桃がため息をついた。
「…綺麗好きのリカにしては悲惨ね」
「うるさい」
「弱いのにヤケ酒なんてしてバカじゃないの」
空いた大量の缶を見つめ、呆れたように言う。
あの日から。
俺は何をして過ごしてきただろう。
朝起きて、なんともいえない虚無感にかられる。
隣で気持ちよさそうに眠るアイツがいなくて物足りない。
ただソファに座って時間になったら家を出て。
現れないアイツの席に胸を痛める。
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