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HRが終わり、リカちゃんが出て行けば教室はまた騒がしくなる。その中でも1番騒がしいヤツはコイツだ。
「あー良かった!!俺、絶対リカちゃん先生に怒られると思った!」
心底安心したように言う拓海は、次の瞬間スマホを見て焦ったように立ち上がる。
「拓海!もうすぐ授業始まるのにどこ行くんだよ?!」
そのまま教室を出て行こうとするから声をかけた。それなのに聞こえてるはずの拓海は何も答えずに走って出て行ってしまった。
拓海は人を無視するようなヤツじゃない。そうしてでも急がないとダメな理由があるんだ。
それは、もしかしたら噂の彼女…かもしれないと思った俺は追うように席を立った。
ボケっとしてた歩を連れて拓海を探す。
「どこに行ったんだよあのバカ!」
「俺ら昨日から拓海のストーカーみたいじゃねぇ?」
「そんな事言ってる場合かよ!歩はどっか思い当たる場所ねぇの?」
もうすぐ授業が始まるから行ける場所は限られてる。この時間の空き教室…ってどこがあったっけ。
キョロキョロする俺の腕を掴んだ歩が黙ったまま階段を降りようとした。
「どこかわかったのか?!」
「黙れ。………ほら、話し声聞こえる」
言われた通り耳を澄ませてみれば微かに聞こえる声。いつも大声の拓海が声を抑えて話すのは珍しい。こうやって隠れてまで電話しないといけない理由。
俺と歩には言えない拓海の秘密って何なんだろう。
「だから俺がなんとかするからっ……大丈夫だって」
階段を降りて少し行ったところ。渡り廊下の壁に隠れて電話をする姿が見えた。
小さな身体をさらに小さくし、誰にもバレないように一生懸命な拓海。
でもな。残念だけどここからはバッチリ見えてんだよ。
「話せばわかってくれるから!俺も一緒に説得するから…だからそんな事言うなって!俺に任せてよ」
いつもバカで怒られてばっかりの拓海から出る『任せろ』の言葉。
ずっと一緒にいて何でも知ってると思ってたのは俺だけじゃない。
「あいつも男だったんだな」
ボソッと呟いた歩を見ると目が合った。俺よりも拓海と一緒にいる時間が多い歩は、俺が感じているよりも複雑なんだろう。
「あの拓海が任せろって言うなんてな。なんか意外…っつーか、なんて言ったらいいのかわかんねぇ」
「歩…」
「子供のことで相手と揉めてるみたいだな。親に反対されてんじゃねぇの」
さっきから何度も『大丈夫』『任せろ』を繰り返し、電話相手を励ます拓海に俺は思った。
彼女の話をしなかったのは置いておいて、今の状況を言えない理由がきっとあるんだ。
拓海は拓海なりに考えて、あえて俺たちには言わないんだ。
でも。
「なんか納得出来ねぇ」
「やっぱり?俺もそう思った」
俺も歩の意見に賛成。たとえどんな理由があっても納得なんて出来るかよ。
足音を立てないようにゆっくり拓海に近づく。
会話に夢中な拓海は俺たちに気づく様子はなく、彼女を説得しようと必死だ。
「俺を信じろって!!絶対にいいパパになるから!」
その一言で美馬さんが言ってたことが本当だって決まった。本当にこの拓海が父親になるんだ。
歩の手が拓海に伸びる。電話を切ったタイミングで首に回し、自分の身体に寄せるように引っ張った。
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