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俺は今目の前で、男子高校生が自分の財布を破れそうなほど強く握りしめて
竹内さん、竹内さんだったのかと呟く姿を見ている。
俺の、車内でだ。
「おい、とにかく飯を買ってこい。
このまま放りだして帰るぞ……。」
あまりの奇行に恐怖心を覚えた俺は、何とか佐々木と距離を置こうと口調を強めて言ってみるが
当の佐々木はそうですよね、行きます。行きますからね、うんうんとかもうマジで頭がおかしくなったのかと思うほど財布を抱きしめ、俺を見つめて動かない。
「もういいわかった。俺が行ってくるから待ってろ……。」
「いえ!そこは俺が!何かリクエストありますか?1分で戻ります!」
佐々木はサッと財布を服で庇うと、機敏すぎる動きでシートベルトを外して扉に手をかけた。
「えっと………じゃあ焼きとり…?」
「はい!行ってくるっスね!」
颯爽と飛び出し、店の自動ドアのゆったりした動きに不機嫌そうに足踏みをする佐々木の背中を眺めて思う。
いや、だからなんで舎弟感丸出しなんだ。
それに助けてくれたってどういうことだ。
俺は佐々木と顔を合わせるのはあのファ〇マ以外にないし、それ以前に顔を合わせた記憶なんてない…筈だ。
そもそも10近く年の差があるあいつと、どこかで知り合うなんてことがあるだろうか。
うーんと首をかしげる。
あいつは俺のことを誰かと勘違いしているんじゃないか。
竹内なんて他にも数えきれないほどの人間が持っている苗字だろう。
佐々木は何があって俺を恩人だと思ってしまったのか。
まあいい。
誤解なんてすぐに解けるだろう。
一つ大きな深呼吸をすると、この雨の犠牲となった煙草の箱に手に取った。
捨てるしか無いのか……はぁ、やっぱり無理だ。勿体ない。干せば蘇生できるか?
ちょっと不味くても、ちゃんと火葬してやるからな。待っていろ。
見るに堪えないしなっしなの緑色に肩を落とし、そろそろ佐々木が戻ってくるであろう助手席に目をやった。
と、
「…っ?!?!?!」
「あ、戻ってました!
竹内さんなんだか考え込んでそうだったので勝手に座っちゃったんスけど…。」
佐々木、もういた。
音にも気が付かないなんて俺の耳は腐っているのか。
いや、違うか。
この大雨のせいで音なんかわかったもんじゃない。
それよりこいつ…本当に1分で戻ってきやがった。恐ろしく優秀な舎弟だ。
……いや、違うか。
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